Friday 21 March 2014

立法院前、占拠二日目。

昨夜の立法院前、通りいっぱい人で埋め尽くされ「拒絕服貿,捍衛民主(サービス貿易協定を拒絶、民主を守り抜け)」、「退回服貿,重啟談判(協定を差し戻し、協議をやり直せ)」の掛け声が繰り返される。その言葉が簡潔に表しているように、ここにいる人びとは単に今回の協定に反対しているだけでなく、本来なすべき立法院での審議の過程を経ずに協定が通されてしまったことを、三権分立を揺るがし民主主義を軽視する国民党の横暴として、抗議をしている。一部台湾の新聞の社説が指摘するように、協定自体への反対主張(「反服貿」)と、正当な手順を怠った手段に対する抗議主張(「反黑箱」)とが混雑しているしているとはいえ、両者の問題意識の根幹は共通している。

ネットでは日本人ユーザーが「中国に台湾を乗っ取られる」などという言い方をしているが、この一件は台湾/中国の二項対立に単純化して処理できる問題ではない。これはあくまで表層的な争点でしかなく、相手が長年台湾の主権を脅かしてきた存在であるが故に分かりやすく浮上しているだけだ。自由化適用枠に指定されているサービス業の中には道路、建設、電力、通信、ダムなど、インフラの大部分が含まれている他、私の友人たちが特に憂慮しているのはテレビ、出版業など、自分たちの日々の生活に密接で且つ「言論の自由」に関わる分野の自由化についてだ。中国の出版社が売る本や雑誌は安価だが、北京政府の検閲を通して初めて出版される。つまり彼らにとって都合の悪い内容は削除、修正。そして言論統制の影響を受け、信頼性に欠けた書籍が台湾に流入する。小規模な台湾の出版社は打撃を受け、台湾にとっては次第に確かな知識・情報が得られない状況に陥る恐れがあるだろう。そもそも、企業進出の際に中国側が利用できる銀行は複数あるにも関わらず、台湾側はひとつの銀行だけに制限されているなど不公平な点がある上、中国の大企業と共に大量の労働者が入ってくれば、台湾でサービス業に従事する人口過半数の労働者が生活の危機に立たされる。自由化は資本の流動を盛んにするが、それで得をするのは台湾にせよ中国にせよ、一握りの大企業。ここ数年の経済政策ですでに台湾企業の中国進出は増えたが「給料は増えるどころか減ってきた」というのが働く人の実感。多くの人が指摘していることでここで再度言う必要もないかと思うけれども、この協定が改善しようとしているのは資本の流動であって働く人の生活や賃金ではない。メディアは「学生が立法院を占拠」としか取り上げないが、確かに立法院の周囲にも学生が大勢駆けつけているとはいえ、仕事を終えたサラリーマン、家族連れ、車いすのおじいちゃんおばあちゃんまで(『台湾人四百年史』、『民主主義』の著者、史明の姿も!)、色んな人が入れ替わり立ち代わり(もちろん、何時間も座り込んでいる人もいる)、自分の生活に関わる重大な事柄が、たった三十秒で決められてしまったことに抗議しようと集まっている。

台湾の今回の出来事が、私には他人事に思えない。馬英九のやり方は昨年12月の特定秘密保護法案の一件にもどこか似通っている。日本の企業もこれに乗じて益々中国進出。今夜から明日にかけてどうなるか…

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